今後増えていく社会保障費をどうするか

一般的な通説として、「今後日本は高齢化に伴い社会保障費の増大が問題となり、国家財政を圧迫する」というものがあります。メディアは基本的にこの論調ですし、それに賛同する人も少なくないのではないでしょうか。結果として下記のような議論が出てきます。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191216-00000054-kyodonews-soci

厚生労働省は16日、3年に1度の介護保険制度改正案を社会保障審議会に示した。一部の低所得高齢者が、介護施設を利用する際の食費の自己負担を月額2万2千円増やす。対象者は最大30万人に上る可能性がある。

 特養など介護保険施設は、食費と部屋代は原則的に自己負担。ただ現在、年収155万円以下の住民税非課税世帯のうち、預貯金や有価証券などが単身で1千万円以下の人は補助を受けられる。今回の見直しで、非課税世帯に「年金収入等が120万円超」という新区分を設け、1カ月の自己負担を2万2千円増やす。預貯金などの保有額も「1千万円以下」から「500万円以下」に引き下げる。

現段階で改正案であり、決定事項ではありませんが、皆さんの感想はどうでしょうか。ネット上のコメントを見ていると下記の3つに大きく分けられるような気がしています。

 

①今後逼迫していく財政状態を考えたら自己負担増額はやむを得ない派

低所得者ではなく高所得者の負担を増やすべき派

③負担を増やすのではなく、まず無駄遣いをなくしてその分を充てるべき派

 

ここで上3つの意見に反論しながら第4の選択肢を訴えたいと思います。それは、自己負担は増やさずに政府支出全体を増やして社会保障費を賄うというものです。

①と②はいずれも自己負担を増やすべきという考えは一緒で、負担する主体が違うだけです。低所得者は現状でもぎりぎりの生活をしていることが多く、これ以上の負担増を強いると社会の不安定化につながります。一方で高所得者(ここでは年収1000万円前後を想定しています)はというと、社会的責任の大きさと所得が釣り合っていない(不相応に少ない)と感じている人が多いのではないでしょうか。その上年収制限のある補助からはたいていの場合外されており、行政からのサービスを受けられないこともあります。

では③の意見はどうでしょうか。一見するといい意見のようにも見えますが、政府の無駄遣いの対象が不明確です。議員定数や報酬の削減をすべきという意見であったり、ある特定の事業を指している場合もあるかもしれません。結局パイの奪い合いという思考から逃れることができていません。

①~③の意見に共通する一番大きな問題は、財政均衡主義に捕らわれているという点です。

デフレに苦しんでいる日本において、政府支出を増やすことの何が問題なのでしょうか。過去の統計から政府支出の増加率と名目GDPの増加率には強い正の相関があることがわかっています。経済成長を目指すためにも、政府支出を増やしていくべきだと考えます。日本には社会保障という大きな需要があります。せっかくの需要を生かして、政府が投資をしていってほしいものです。