MMTと医療について考える

 MMTを医療財政に活用できないか

政府の財政出動においてその制約となるのは供給能力です。では医療における供給能力とは何でしょうか。医療というサービス(この言葉は嫌いですが今回はわかりやすいので使います)を供給する上で必要なものを列挙します。

 

・ヒト

・薬

・医療機器(CT、MRIなど)

・医療設備(建物含めた設備)

などなど・・・

 

つまり、これらを供給できる限りにおいて政府は財政出動をしてもいいということになります。

最近高額薬剤がしばしば取り上げられています。個人的にインパクトが強かったのは、再発・難治のCD19陽性急性リンパ性白血病およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫を対象としたキムリアです。1人の患者さんあたり3350万円という薬価が注目され、一部で批判的な意見もみられました。

なぜ3350万円という規格外の値段になったかというと、患者さん自身の免疫細胞(T細胞)に遺伝子導入を行い、腫瘍細胞を攻撃できるように作られた特殊な細胞製剤であるためです。患者さんのT細胞の採取、遺伝子導入といった工程は専門的な技術を要します。また疾患自体がそこまで多いものではない上に、投与対象となるのも既存治療を行ったが再発したもしくは効果がなかった症例に限られます。高額になるのはやむを得ないところがあります。

しかしMMTに則れば、3350万円という薬価は問題ではありません。薬価そのものよりもそれを供給する能力がどうかという点が問題となります。薬を供給できる体制という観点から製薬会社の力はもちろんですが、入院で投与するための病院、入院する患者さんの医療に携わる医師や看護師などの医療スタッフ、T細胞の採取にあたり採取用の機器を取り扱う臨床工学技士などの人やものがサービスを提供するのに必要です。

十分な支払いがなされなくなると、結果的にそのサービスが維持できなくなり、本当に医療を提供することが難しくなってしまいます。

重要なことはお金ではなく、サービスを供給する力だということを強調したいと思います。