お札と硬貨で発行元が違う?!~お金について考える~

みなさん、お金は好きでしょうか。

好きか嫌いかと聞かれると即答しにくいかもしれませんが、「お金なんて全くいらない!」という人はいないのではないでしょうか。

当たり前のように世の中に流通しているお金ですが、お金の正体について考えてみたいと思います。

日本国内で流通しているお金とその発行元

 まずは日本国内で流通しているお金について考えてみます。現在、円が流通していることは皆さんご存知の通りですが、なぜ円が流通しているのでしょうか。その疑問を解決するため、一つ一つ調べていこうと思います。

 まずはお金をどこが作っているのかという点です。現在流通している円はどこが発行しているのでしょうか。

 ここでまずは財布の中のお札・紙幣を見てみてください。どの紙幣にも「日本銀行券」と書かれていますね。その名の通り、紙幣は日本銀行が発行しています。実際に印刷をしているのは国立印刷局ですが、国立印刷局日本銀行の指示で発行しているのです。

 そして次に硬貨を見てみましょう。こちらには「日本国」と記載されています。日本銀行とはどこにも書いていないですね。硬貨は日本国政府が発行しています。実際に硬貨を作っているのは造幣局ですが、こちらは日本国政府の指示で発行しています。

紙幣と硬貨で発行元が違う理由

 なぜ紙幣と硬貨で発行元が違うのでしょうか。その理由を考える上で歴史的な背景を知る必要があります。もともと広く流通していたお金は金貨や銀貨でした。政府が貴金属を加工して硬貨を作らせて、それを流通させていたと考えられます。硬貨を政府が発行しているというのは昔からそうみたいです。

 しかし金を持ち歩くのは物騒です。そこで出てくるのが現代でいうところの銀行です。金を実際に持ち歩くのは奪われたりなくしたりする危険があるため、人々は金を預けるようになりました。実際には金匠(金を加工する人)に預け、それと引き換えに金匠が約束手形を発行していたそうです。やがて約束手形そのものが価値を持つようになり、これが銀行券の始まりとされています。銀行が発行した手形が銀行券の役割を果たすので、紙幣は銀行が発行しているのです。

 上述のような紙幣については、手形の裏付けとして金があるので、このような手形を兌換(だかん)紙幣といい、このような制度は金本位制といいます。20世紀後半まで金本位制は残っていました。現在は信用貨幣と言って、裏付けに金があるわけではありません。このような背景があるので、硬貨は政府が、紙幣は銀行が発行するのです。

世の中にどれくらいお金が流通しているの?

 現在流通している紙幣のざっくりした量を確認する方法があります。それは日本銀行貸借対照表(バランスシート)をみることです。バランスシートとは、資産と負債をそれぞれ項目別に記載してまとめたものです。日本銀行のバランスシートは日本銀行のホームページから確認することができます。最新の平成31年3月31日現在のものを見てみましょう。

(参考:https://www.boj.or.jp/about/account/zai1905a.htm/

 総資産が約557兆円、総負債が約553兆円、資産と負債の差額である純資産が約3.8兆円となっています。さすが中央銀行だけあってすさまじい額です。本題の日本銀行券の発行残高は「負債の部」の中の「発券銀行券」にあります。見てみると約107兆円日本銀行券が世の中に出回っているのですね。加えて日本銀行には約393兆円の日銀当座預金が預けられています。日銀当座預金は政府もしくは銀行しか持てない預金ですが、預け主が引き出す際に日本銀行券に変わりますので、発行済みのお金とほぼ同義だと思っていただければいいと思います。合わせて約500兆円の日本銀行券もしくは日銀当座預金があるということですね。これに硬貨の発行残高を加えたものをマネタリーベースと呼びます。ちなみについつい「資産の部」を見てしまいそうになりますが、日本銀行券は日本銀行にとって資産ではありませんのでご注意ください。

 ちなみに銀行預金も、現金とは異なるお金の一種です。ピンときにくいかもしれませんが、現金と預金は別物です。預金については2017年時点で1000兆円をこえています。(参考:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGC24H01_Q7A610C1EA2000/

 日本銀行券の発行残高より多いのが不思議な感じがしませんか?実はこれには市中銀行がお金を発行できる信用創造という仕組みが絡んでいるのですが、これについてはまた取り上げたいと思います。

円になぜ価値があるの?

 これについてしばしば「信用があるから」という説明がなされていますが、最近よく取り上げられている現代貨幣理論(MMTでは面白い説明がされていましたのでご紹介します。まず円を自分が発行する立場になったときのことを想像してみてください。せっかく発行するのだからみんなに使ってもらいたいと思うのが自然な感情だと思います。そこで政府が日本円をみんなに使ってもらうためにやっていることが一つあります。徴税です。所得税にしろ、消費税にしろ、日本国政府は日本円以外での納税を認めてくれません。ドルで払いたい、あるいはビットコインで払いたいと言っても拒否されてしまいます。そうなるとみんなある程度は円を持とうとしますよね。みんながある程度持っていてしかも必要とするものだから流通するのです。個人的にはすごくしっくりくる説明だったのでご紹介させていただきました。

 

以上、円について考えてみました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。