無給医問題について

まずはこちらの記事からご紹介します。

 

日本経済新聞 2019年6月28日の記事より

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46691800Y9A620C1CC0000/

50大学病院で「無給医」2000人超 文科省調査

 文部科学省は28日、全国の大学病院で働く医師・歯科医師のうち、2191人が給与を支払われない「無給医」であったとする調査結果を公表した。大学院生らが自己研さんや研究などの名目で診療していたが、実質的には労働行為に当たり、各病院は遡及して給与を支払うといった対応を決めた。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険に未加入だった。(後略) 

こちらについて少し解説したいと思います。

そもそも無給医って何?

無給医とはその名の通り、勤務先から給与をもらっていない医師のことです。その中のほとんどの医師は、非常勤として勤務する病院からの給与のみで生計を立てているかと思います。一般に大学に所属する医師(今回の無給医含む)は非常勤として市中病院に勤務していますので、無給医といえども生活が成り立たないわけではないのでそこは誤解なきようお願いします。

医師不足が叫ばれるようになって久しいですが、大学病院も基本的には例外ではありません。大学病院に所属する医師は病院の業務だけでなく、研究・教育という仕事も抱えています。一方で例えば大学院生という形で、雇用関係にないまま所属している医師がいます。大学院生の本分は研究ですが、医師免許を持っているので病院に出れば医師として戦力にはなりうるわけです。

大学院生の立場で、先輩である大学病院医師に「ちょっと手伝ってよ」といわれて断るのはなかなか難しいものです。かくしてその大学院生は無給医になってしまうわけです。

 

無給医の何が問題なの?

無給医の問題は大きく2つだと思います。

①労働に対する対価がきちんと払われていないということ

②(多くの場合)労災保険等に加入させてもらっていないこと

①については当たり前ですね。労働に対する対価を払わないのは労働基準法違反です。

あまり報道されていないのは②のほうかと思います。医療従事者は様々なリスクと向き合いながら仕事をしています。わかりやすい例でいえば感染症でしょうか。病院には多くの感染症患者さんも来るので、それがうつるリスクがあります。針刺し事故などで血液を介した感染をする可能性もある点は、あまり他の業界ではないかもしれません。労災保険に加入していなければ、例えば肺結核に感染・発症して数週間入院することになっても何の補償もありません。また医療事故が発生してしまった場合の責任の所在があやふやになってしまいます。雇用関係を結んでいないということは、「雇ってもいない医師が勝手に診療をした」と病院側から言われかねない状況なので、無給医の立場としては保身に走らざるを得ません。患者さんにとっても不利益になるかと思います。

そもそも無給医が生まれたのはなぜ?

一つ大きな原因は、ざっくりいうと大学病院のお金が足りないからです。十分に人を雇えないのに仕事だけは増えていく状況で起きたことです。加えて国からの給付金が年々削られていることも背景にあります。そのため研究費も削られますし、大学病院で雇用できる医師数も多くありません。

まとめ

本記事を通して訴えたいことは1つです。

大学への予算配分をしっかりしてほしい!

大学病院もそうですが、病院に限らず大学全体について予算配分をお願いしたいです。

本件で「元」無給医に払われる給与はスズメの涙だと聞いております。もちろんないよりはいいのですが、結局「元」無給医は他病院での非常勤勤務なしでは全く生活できません。

また大学は研究という将来への投資を行う場でもあります。研究機関へのしっかりした投資が将来の日本の発展につながると考えます。

国会議員や官僚の方々にぜひお願いしたいです。