厚生労働省の実情
厚生労働省については、正直なところあまりいい感情を持っていません。ただ今回の新型コロナウイルスの対応については同情する面もあります。
今、新型コロナウイルスの対応に追われる厚生労働省の内部事情がどうなっているのか、興味深い記事があったのでご紹介します。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-mhlw
人員不足についてはすぐの対応は難しいと思います。あまり知られていませんが、厚生労働省職員の53%が非正規職員というデータもあり、大きな問題です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20200227-00164904/
ただし予算不足についてどうにかなるのではないかと思っています。この緊急事態に財源論に縛られて予算が執行できないというのはいかがなものでしょうか。国家財政について言及するのは百歩譲っていいとしても、緊急事態なのですから赤字国債を発行すべきです。頭のいい財務省の皆さん、いかがでしょうか。
新型コロナウイルスのPCR検査の保険適用について
新型コロナウイルスのPCR検査が今月保険適用されるとのことで、詳細が徐々にわかってきました。
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=68873
費用について
民間検査会社など外部へ委託する場合は1800点、国立感染症研究所や大学病院など院内で検査する場合は1350点
とのことです。1点10円で、多くの施設は民間検査会社に委託することになると思いますので、18,000円です。健康保険の自己負担は1~3割ですので、1,800~5,400円ですね。ただし、その負担額については公費で負担するということになるという話もあります。
検査対象について
「医療上の必要性に基づき医師が判断」した患者になるようです。医師がCOVID-19を疑った場合にできるということですね。でもどの医療機関でもできるというわけではないようです。
実施可能施設について
とのことです。
入院中の原因不明の肺炎について、保健所の判断抜きで検査できるのはありがたいです。
外来については帰国者・接触者外来を設置している医療機関でないとできませんので、実施医療機関が限られます。これはこれでいいと思います。例えば一般的なクリニックや規模の大きくない病院では、検体採取のための個室などが準備できません。医療者の安全を守るためには制限も必要だと思います。
結局のところ大きくは検査数が変わらないのかもしれませんが、現場としては助かるように思います。
「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」にマスクやトイレットペーパーを適用すべき
「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」という法律があります。マスクやトイレットペーパーなど、現在品薄になってしまっている物資についてこの法律を適用すべきという意見を見たので読んでみました。
まずは目的です。
第一条 この法律は、国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資(以下「生活関連物資等」という。)について、買占め及び売惜しみに対する緊急措置を定めることにより、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に資することを目的とする。
キーワードは「生活関連物資等」です。これの買占めや売惜しみに対する緊急措置を定めた法律のようです。マスクやトイレットペーパーの買占めが今まさに起きていることであり、ぴったりのような気がします。
生活関連物資の指定方法は第二条に書いてあります。
(物資の指定)
第二条 生活関連物資等の価格が異常に上昇し又は上昇するおそれがある場合において、当該生活関連物資等の買占め又は売惜しみが行なわれ又は行なわれるおそれがあるときは、政令で、当該生活関連物資等を特別の調査を要する物資として指定する。
2 略
(調査)
第三条 内閣総理大臣及び主務大臣は、前条第一項の規定により指定された物資(以下「特定物資」という。)について、その価格の動向及び需給の状況に関し必要な調査を行なうものとする。(売渡しに関する指示及び命令)
第四条 内閣総理大臣及び主務大臣は、特定物資の生産、輸入又は販売の事業を行う者が買占め又は売惜しみにより当該特定物資を多量に保有していると認めるときは、その者に対し、売渡しをすべき期限及び数量並びに売渡先(内閣総理大臣及び主務大臣が当該特定物資の買受けにつきその同意を得た者に限る。)を定めて、当該特定物資の売渡しをすべきことを指示することができる。
2 内閣総理大臣及び主務大臣は、前項の規定による指示を受けた者がその指示に従わなかつたときは、その者に対し、売渡しをすべき期限及び数量を定めて、当該売渡先に当該特定物資の売渡しをすべきことを命ずることができる。3~9 略
生活関連物資等が高騰した又は高騰しそうな場合で、買占めや売惜しみがある場合(またはその恐れがある場合)には政令で調査を要する物資(特定物資)に指定され、その後調査が行われます。そして調査の結果、条件を満たした場合に買占めまたは売惜しみと認められた場合には売渡の指示をし、それに従わない場合には命令にランクアップするようです。命令に従わない場合には罰則があります。
第九条 第四条第二項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
これをみるとマスク買占めを取り締まるのにぴったりですね。気になったのは、メルカリなどに出品する人が第四条の「特定物資の生産、輸入又は販売の事業を行う者」に該当するのかどうかですが。いずれにせよ今後もこのような事態は起きうるわけですので、ぜひとも法整備をお願いしたいものです。
COVID-19に対する抗ウイルス療法による治療の考え方
日本感染症学会のホームページにCOVID-19に対する抗ウイルス療法による治療の考え方が掲載されました。
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_antiviral_drug_200227.pdf
抗ウイルス療法をするかどうかは現時点で以下の基準を参考にするようです。
1. 概ね 50 歳未満の患者では肺炎を発症しても自然経過の中で治癒する例が多いため、必ずしも抗ウイルス薬を投与せずとも経過を観察してよい。
2. 概ね 50 歳以上の患者では重篤な呼吸不全を起こす可能性が高く、死亡率も高いため、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった段階で抗ウイルス薬の投与を検討する。
3. 糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態等のある患者においても上記 2 に準じる。
4. 年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例では抗ウイルス薬の投与を検討する。
50歳未満で持病がなければ基本的には経過観察、50歳以上または持病がある場合は酸素投与が必要となった時点で抗ウイルス薬を投与することになります。50歳未満でも呼吸状態が悪化傾向にある場合には抗ウイルス薬を投与するという指針です。
抗ウイルス薬で何を投与すればいいかという点については、日本での入手可能性と有害事象などの観点からロピナビル・リトナビル(カレトラ)とファビピラビル(アビガン)の2剤が提示されています。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/022601110/
これら2剤のほかにレムデシビルが有望そうです。
治験の結果が待ち遠しいですね。
新型インフルエンザ等対策特別措置法について勉強してみる
今回の新型コロナウイルスについて、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を適用すべきというのが一部で話題に上がっています。私自身はこの法律に詳しくないので、今日は勉強してみます。
まずは第一条の目的です。以下、引用部分の太字や下線は私が編集したものです。
第一条 この法律は、国民の大部分が現在その免疫を獲得していないこと等から、新型インフルエンザ等が全国的かつ急速にまん延し、かつ、これにかかった場合の病状の程度が重篤となるおそれがあり、また、国民生活及び国民経済に重大な影響を及ぼすおそれがあることに鑑み、新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画、新型インフルエンザ等の発生時における措置、新型インフルエンザ等緊急事態措置その他新型インフルエンザ等に関する事項について特別の措置を定めることにより、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「感染症法」という。)その他新型インフルエンザ等の発生の予防及びまん延の防止に関する法律と相まって、新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もって新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的とする。
「新型インフルエンザ等」の定義については第二条にあります。
一 新型インフルエンザ等 感染症法第六条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同条第九項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)をいう。
感染症法の条文は以下です。
第6条9 この法律において「新感染症」とは、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。
今回の新型コロナウイルスは9項の新感染症に該当すると考えられます。
第三条~第五条は国、地方公共団体、事業者、国民それぞれの責務や、基本的人権の尊重といった総論的な話です。
第六条~第十三条では政府(第六条)、都道府県知事(第七条)、市町村長(第八条)が「新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画」を立てることを義務付け、それに応じて各団体が業務計画を立てることが義務付けられています。
第十四条~第三十一条では新型インフルエンザ等の発生時における措置が規定されています。
この法律の特徴は第三十二条以降の「新型インフルエンザ等緊急事態措置」でしょう。
政府対策本部長(≒内閣総理大臣)が緊急事態宣言をすることで、地方自治体を含めた各団体が感染症対策のために行動することが求められ、違反した場合には罰則規定があるなど一定の強制力があります。
今回の新型コロナウイルスについて現在の内閣は新立法で対応する方針との報道が出ています。この特措法を適用するのか、新法を作るのかどちらがいいのかわかりませんが、 一国民として協力していきたいと思います。
地域別死亡率まとめ 2020/2/27
久々にまとめてみました。
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/situation-reports
感染者 | 死亡者 | 死亡率(%) | |
全世界 | 81,109 | 2762 | 3.4 |
中国全体 | 78,191 | 2718 | 3.5 |
湖北省全体 | 65,187 | 2615 | 4.0 |
湖北省以外 | 13,004 | 103 | 0.8 |
中国以外 | 2,918 | 44 | 1.5 |
日本 | 164 | 1 | 0.6 |
クルーズ船 | 691 | 3 | 0.4 |
当初よりも死亡率が高くなっているのは、感染から重症化、死亡までのタイムラグの影響でしょうか。
そして年齢別死亡率のまとめがこちらです。全体死亡率が2.3%とされていたころのデータですので少し古いですが、70代で8.0%、80代以上で14.8%となっており、高齢者で死亡しやすくなっています。
ただし20代と若い方で重症化する例も存在します。「サイトカインストーム」についてテレビでも取り上げられていますが、それには否定的な論文も出ています。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.19.20024885v1
まだ正式な報告ではありませんが、こちらの論文によれば重症化はサイトカインストームでなくウイルスそのものによるようです。
まだまだわからないところが多いウイルスです。
和歌山県の情報がしっかりしている
新型コロナウイルスに関して、日本国内での検査数が少ないのではないかということが指摘されています。そんな中、和歌山県のホームページがしっかりしているという話を聞いたので確認してみました。
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/covid19.html
和歌山県は現在までに13人の感染者が出ています。比較的早い段階で感染者のニュースが出たために覚えている方も多いと思います。
その和歌山県で何件検査を行っているのか、そして感染者の経過がどうなっているのかという情報が載っていました。
まずは何件検査を行っているのかという、本日時点での情報です。
一般に今現在検査対象になるのは、COVID-19が疑われた場合です。和歌山県は積極的に検査を行っている都道府県の1つだと思います。
こちらが陽性者がいつPCR陽性になったかと、その後の検査結果です。陽性になった翌日には陰性になる症例もいれば、長期間陽性で持続する症例もいて、ヒトによって経過が全然違うことが読み取れます。
まだ入院中の方もいらっしゃるようなので、一日も早い回復をお祈りします。